法人カードの利用は便利な決済手段ですが、決済時に気になるのは「領収書が必要なのか」どうかです。
法人カードの領収書は正式な書類ではないため、受け取ってもそれは正しい領収書ではありません。しかし、法人カード決済時でも領収書を受領しておくほうが、社内処理や税務調査対策のためにも有効です。
そこで本記事では、法人カード利用時の領収書関連の内容について詳しく解説します。さらに、クレジット売上票や利用明細書の概要と保管の必要性、効果的な書類管理方法から注意点まで幅広く解説します。
目次
法人カードの領収書について理解を深めるために、まずはカード決済時に受領する書類や、その内容を見ておきましょう。法人カードで決済した際、受領する書類は、主に「領収書」「明細書」「請求書」の3点です。
領収書 | なんらかの取引で、金銭を受け取ったことを証明する書類。 |
明細書 | 取引した商品・サービスの詳細を示す書類。クレジットカード会社から必ず発行される。 |
請求書 | 提供した商品・サービスの対価を受け取るために、取引先に発行する書類。 |
明細書はカード会社から必ず発行される種類ですが、特に領収書は、決済時に発行してもらえないことが多々あります。法人カード決済に領収書を受け取らなくても問題はないのでしょうか?
結論から言えば、「基本的に」法人カード決済時に領収書は必要ありません。しかし、領収書は受け取って保管しておくことを推奨します。なぜ法人カード決済に、原則領収書が不要であるか、次の流れで解説します。
実は、法人カード決済時に受領する領収書は、正式な書類ではありません。なぜなら、法人カード決済は信用取引で、決済時に店側は代金を受け取っていないからです。
領収書とは「なんらかの取引で、金銭を受け取ったことを証明する書類」です。法人カード決済時点では、商品・サービス提供側は代金を受け取っていないので、この時発行される「領収書」は正しい領収書ではないのです。
実際に、国税庁も、クレジットカード決済時に発行される領収書について、次のような見解を述べています。
第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)は、金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるものです。ご質問のように、クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
国税庁『クレジット販売の場合の領収書』
領収書が正式な書類ではなく、発行されないことが多いとはいえ、社内の経理処理のために取引を証明する書類が必要です。そこで、法人カード決済の証憑書類となるのが「クレジット売上票」です。
クレジット売上票とは、カード会社を通した取引で、商品・サービスの引き渡しが行われたことを示す書類です。クレジット売上票は、印字されたレシートや、手書きなどで発行されます。
カード会社から発行される明細書と同様、クレジット売上票には取引された商品・サービスの詳細が記載されており、取引を証明する証憑種類となります。法人カード決済時に領収書は基本不要ですが、クレジット売上票やレシートなどは必ず受領し、社内で保管しておきましょう。
法人カード決済時の領収書は正式書類ではないので、基本的に必要ありません。しかし、2023年10月1日から始まったインボイス制度によって、領収書などの書類を活用するケースが出てきました。
そのため、仕入税額控除を受けるために、インボイス要件を満たす領収書を受領・保管することも有効です(要件を満たせばレシートやクレジット売上票でも可)。
インボイス制度が開始したことにより、適格請求書(インボイス)の交付がない取引については、仕入税額控除ができなくなりました。
法人カード決済においても、仕入税額控除を受けるには、インボイスの要件を満たす書類が必要です。法人カード決済時では、インボイス要件を満たす書類とは次のようなものです。
- 領収書
- レシート
- クレジット売上票(利用明細を示す書類)
仕入税額控除を受けるには、適格請求書の要件を満たすレシートやクレジットカード売上票などが必須です。
領収書についても正式な書類ではないため受領の必要はありませんが、適格請求書の要件を満たしているのであれば、その証憑書類として機能します。
そのため、法人カード決済時にインボイス要件を満たす領収書を受領・保管し、社内の経理処理に活用するケースも考えられます。
仕入税額控除を受けるため、領収書やレシート、クレジット売上票で記載が必要な内容は次の通りです。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
- 取引を行った年月日
- 取引の内容(軽減税率の対象品目がある場合、その旨も記載)
- 税率ごとに区分して合計した金額(税抜きまたは税込み)、および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税など
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
法人カード決済時に、取引先から受領したレシートやクレジット売上票が上記の要件を満たしていれば、領収書は必要ありません。一方、要件を満たした領収書であれば、正式な書類ではありませんが、証憑書類として受領するのは有効な方法です。
なお、法人カードを利用すると受領する、カード会社から発行される明細書(≠取引先が発行するクレジット売上票)はインボイスの要件を満たさない点に注意しましょう。
国税庁公表の「クレジットカード会社からの請求明細書」によると、カード会社から発行される明細書は取引先が発行したものではなく、また上記要件1「適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号」も記載されていないため、適格請求書として有効ではありません。
あくまで、法人カード決済時に取引先から発行され、インボイス要件を満たす領収書やレシート、クレジット売上票を受領・保管するようにしましょう。
領収書の整理にも役立つ、法人カードのメリットを4つ紹介します。
社員に法人カードを与えて支出に使ってもらい、経費精算システムを活用することで、経理作業がシンプルになります。
法人カードで決済すると、Web上で利用明細を確認できます。さらに、経費精算システムを活用することで明細を自動で取り込むことができ、経理処理が格段に楽になります。
現金決済に比べて、経理処理にかかわる手間と時間の削減が可能です。
法人カードは、購入日の1か月後~2か月後に支払日があります。法人カードの支払いを一定期間遅らせることができるため、キャッシュフローに余裕を生みます。特に、資金繰りが厳しいスタートアップ企業や中小企業にとって、資金の柔軟性は大きなメリットです。
多くの法人カードには、利用額に応じてポイントが還元されるプログラムがあります。ポイントをオフィス用品の購入や出張費などに充てることで、経費削減につなげることが可能です。
法人カードにもよりますが、0.5~1%程度の還元率でポイントが付与されます。単に現金で決済する場合に比べ、ポイント還元分が経費削減につながります。
法人カードによっては、支払い先を制限できる機能があります。不正支出のリスクを低減でき、ガバナンスを強化することが可能です。
また、法人カードはWeb上で利用明細を確認できるため、社員の不正利用を未然に防止できます。上場企業や、上場を目指していてガバナンスを強化したい企業などにも、法人カード決済は有効な決済手段です。
法人カードは企業にとって便利な決済手段ですが、利用の際にはいくつか注意点があります。そこで、法人カードで支払いを進める際の注意点を4つ紹介します。
この記事でも説明したように、「クレジット売上票」と「領収書」を両方保管することは重要です。しかし、これらの文書を同時に保管してしまうことで、誤って二重精算を行う恐れがあります。
二重精算しないように、経費精算システムを使ったり、二重チェック体制を設けたりすることが大切です。
法人カードの利用に関する社内ルールを明確に設定することは、不正使用を防ぐために欠かせません。
「ポイントは個人利用しない」「決済には上長の承認を得る」といったルールを策定し、社員によって遵守されるよう周知徹底することが必要です。ルールの周知徹底により、社員が法人カードを好き勝手に利用することを防ぎます。
個人カードと異なり、法人カードには年会費がかかる場合が多くなっています。その分コストを圧迫するので、法人カードの導入には注意が必要です。
年会費は、利用するカードの種類や提供するサービスによって異なります。そのため、法人カードを選定する際には、その利点が年会費のコストを上回るかどうかを慎重に検討しましょう。
法人カードの中には、分割払いやリボ払いができないタイプもあります。分割払いやリボ払いができない場合、大きな支払いも、一括で支払う必要があります。
個人のクレジットカードのように分割払いやリボ払いの利用を検討している場合、法人カードの選び方に注意を払いましょう。
UPSIDERカードは、法人カードが60,000社を超える企業が導入している法人カードです。証憑回収を含めた経理業務の効率化や、不正リスクの軽減につながる法人カードです。
UPSIDERカードは、領収書を含めた証憑回収に優れた法人カードです。iOS/Androidアプリ、Slack、Web管理画面から簡単に証憑をアップロードできます。領収書などの証憑が、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているかどうかも自動で判別可能です。
さらに、200以上のサービスに利用先を限定できるため、社員のカード不正利用を防ぎます。日次や月次、取引ごとに上限金額や利用期間を設定でき、法人カードの管理も容易になります。
ほかにも、UPSIDERカードには「バーチャルカード・リアルカードの発行枚数が無制限」「経費精算システムへAPIで連携可能」など、多岐にわたる機能とサービスを提供しています。
企業の財務・経理業務を効率的かつ安全に管理・遂行するには、UPSIDERカードは便利な法人カードです。
領収書などの証憑管理が容易になったりガバナンス強化されたりしたことで、UPSIDERカードの導入に喜ぶ企業様の声を聞きます。
株式会社バルクオム(以下、バルクオム)様は、メンズスキンケアブランド『BULK HOMME』を展開する企業であり、スキンケア業界における革新的なプレーヤーとして知られています。
バルクオム様では、急速な事業拡大に伴い会計処理に毎月数時間を要しており、この時間を削減して効率化することが急務となっていました。そこで、バルクオム様はUPSIDERカードを導入。
結果、従来数時間かかっていた会計処理が、わずか数分で完結するようになりました。会計ソフトへの自動データ連携や、リアルタイムでの経費処理を実現しており、経理作業の時間を大幅に削減しています。
また、決済ごとの明細がリアルタイムで確認できるため、経理業務の透明性が向上しています。不正利用のリスクを軽減し、企業の財務健全性を保護するためのセキュリティ機能も充実しています。
毎月の会計処理時間を大幅に短縮し、経理部門の負担を軽減したことで、バルクオム様はさらなる事業成長へ注力可能に。UPSIDERカードは、経理業務のアナログ作業からの解放だけでなく、事業運営の効率化や透明性向上にもつながる法人カードです。
株式会社Photosynth(以下、フォトシンス)様は、革新的なIoTサービス「Akerun(アケルン)」を通じて、鍵のクラウド化とセキュリティの向上を実現している企業です。
東京証券取引所グロース市場に上場しているフォトシンス様は、業務の効率化と経営資源の最適化を目指していましたが、各部署からの証憑集めに大きな課題を抱えていました。
フォトシンス様では、各部署からの証憑を集める作業に、膨大な時間と労力が必要でした。特に、月次決算期間中の貴重なリソースを大きく消費することは、フォトシンス様でも課題だったのです。
そこで、UPSIDERカードを導入することにより、月初時点で95%以上の証憑回収を実現できました。月次決算期間中における作業の効率化が図られ、1人日分の工数削減に成功しています。
証憑のデジタル化と自動回収機能により、経理業務が大幅に改善され、経理部門はより戦略的な業務にリソースを割り当てることが可能になっています。
法人カードは信用取引のため、決済時点では現金を受け取っておらず、その場で発行される領収書は、正式な領収書ではありません。
ただし、領収書が正式な書類ではなくても、社内処理や税務調査対策として保存しておくことを推奨します。特に、2023年10月から始まったインボイス制度の下では、適格請求書の要件を満たす書類の保管がより一層重要になります。
法人カードのメリットを最大限に活かしつつ、二重精算の防止や社内ルールの定義、年会費や支払い方法の制限を考慮することが、効率的かつ安全なカード利用につながるでしょう。
UPSIDERカードのような、経理業務の効率化やガバナンス強化に貢献する法人カードの導入を、ぜひご検討ください。