法人カードの領収書が不要・必要なときを解説|経費精算で必要な書類とは

法人カードの領収書が不要・必要なときを解説|経費精算で必要な書類とは

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事業で発生した経費に関する書類は、法人税法により一定期間保管しておかなければならないとされています。事業に関する支払いを法人カードで行っている場合は、決済時に発行されるレシート(領収書と兼ねているケースあり)やクレジット売上票などを保管しておきましょう。

また、経費精算時はクレジット売上票が必要です。領収書は証憑書類には該当しないため不要と思われがちですが、一定の要件を満たせば証憑書類とみなされたり、仕入税額控除には領収書が必要になったりする場合があります。支払いに関連する書類は適切に保管しましょう。

3行でまとめると…

  • 法人カードで決済した取引を経費精算する際は、クレジット売上票が必要##first
  • 領収書は決済した時点では証憑書類にならない##second
  • 二重精算や不正利用を防止するためには、適切な書類の保管が大切##third
監修者 高柳政道(一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、DCプランナー2級)

監修者

一級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得後、2020年5月に金融コラムニストとして独立。企業に属さないFPとして投資商品の選び方を中心に情報を発信。 資産運用・生命保険・相続・ローンなど、多岐に渡るジャンルの執筆及び監修業務を手掛け、関わった記事数は500を超える。
保有資格:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、DCプランナー2級

【監修者コメント】
従業員が法人カードで業務に関する支払いをした場合、店頭なら「領収書」や「領収書を兼ねているレシート」を受け取ることがありますが、経費精算において領収書は利用できません。ただし、仕入税額控除の際には必要になることがあるため、安易に捨てずにカード売上票と一緒に保管することをおすすめします。

目次

店舗での法人カード決済時に受け取る領収書は証憑書類にならない

店舗で法人カード決済をすると、レシートやクレジット売上票が発行されます。レシートは領収書も兼ねている場合もあります。このとき発行されるレシートは、領収書を兼ねていても経費精算における証憑書類にはなりません。

領収書とは「商品やサービスの取引において、金銭を受け取ったことを証明する書類」です。決済した時点で店舗は代金を受け取っていないため、証憑書類に該当しないとされています。

国税庁は、クレジットカード決済時に発行される領収書について、次のような見解を述べています。

第17号の1文書(売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書)は金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるものです。ご質問のように、クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。

国税庁『クレジット販売の場合の領収書』

店舗での法人カード決済時の証憑書類になるのは「クレジット売上票」

法人カード決済時の証憑書類となるのは「クレジット売上票」です。クレジット売上票とは、カード会社を通した取引で、商品やサービスの引き渡しが行われたことを示す書類です。

クレジット売上票とは

クレジット売上票には次の項目が印字されており、証憑書類として利用できます。

  • 加盟店の名称(店舗名)
  • 利用年月日と時間
  • クレジットカード情報(カード番号の一部や有効期限など)
  • 合計金額など

クレジット売上票は経費を計上する際に必要な書類となるため、保管しておきましょう。

仕入税額控除を受けるためには「領収書」も必要

仕入税額控除を受ける場合は、領収書も必要です。仕入税額控除とは、仕入の際にかかった消費税を差し引いて、消費税額を計算することです。これにより、消費税の二重課税を防止できます。

インボイス制度が導入されたことで、適格請求書(インボイス)がない取引は、仕入控除が不可能となりました。仕入税額控除を受けるためには、次の書類のいずれかを保管しておかなければなりません。

  • 領収書
  • レシート
  • クレジット売上票

領収書は証憑書類になりませんが、仕入税控除を受けるために必要な書類であるため、大切に保管しておきましょう。

適格請求書(インボイス)の要件

仕入税額控除を受けるために必要な書類として、領収書やクレジット売上票があります。適格請求書(インボイス)として扱われるのは、次の項目が記載されているものになります。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
  • 取引を行った年月日
  • 取引の内容(軽減税率の対象品目がある場合、その旨も記載)
  • 税率ごとに区分して合計した金額(税抜きまたは税込)、および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税など
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

領収書は証憑書類にならないとされていますが、上記の要件を満たせば証憑書類として受領することが可能です。

また、カード会社から発行される利用明細書は、適格請求書(インボイス)としての要件を満たしていないため利用できません。

ネットショッピングも「領収書」が必要

ECサイトでの買物を、法人カードで決済した場合は、レシートやクレジット売上票が自動で発行されることはありません。自分で注文履歴から発行するか、注文メールに添付されたものを確認する必要があります。

ECサイトからダウンロードした領収書は、電子帳簿保存法によりPDFなどのデータとしてクラウド上で保存しましょう。

また、ECサイトが発行する領収書以外に、カード会社が発行する利用明細書を証憑書類として使用することも可能です。

支払いに法人カードを利用するメリット

経費の支払いに法人カードを利用すると、次のメリットが得られます。

支払いに法人カードを利用するメリット

経費の精算が効率化する

取引や備品の購入など、事業に関する支払いを法人カード決済に一本化することで、経費精算の効率化が図れます。

法人カードで決済されたものは、支払日や場所(店舗名など)、金額が利用明細として一覧で確認できます。さらに、経費精算システムと法人カードを連携すると、法人カードで決済したものが自動的に計上され、記入ミスや漏れが防止できることもメリットです。

また、従業員が経費を現金で立て替えた場合、従業員が申請書を提出し、経理担当が立て替えた分の代金を従業員に渡す工程が発生します。しかし、法人カードで決済すると、従業員が経費を立て替えることがなくなるため、申請書の作成や経理の精算手続きなどの作業が削減できます。

会計ガバナンスを強化できる

法人カードで経費を支払うことで、利用明細書に証拠が残るため、会計ガバナンスの強化につながります。会計ガバナンスとは、不正会計などのリスクを抑えるための管理体制や仕組みのことです。

カードの利用明細には、利用年月日や利用店舗名、金額、支払方法などが記載されており、いつどこでカードが使われたのかが明確になっています。そのため、不正利用対策として有効といえるでしょう。

また、利用先を制限できる法人カードもあります。特定の店舗でのみ法人カード決済ができるなど、不正利用のリスクが軽減できます。

キャッシュフローに余裕ができる

法人カードは、カード決済してから1~2ヵ月後に引き落とされます。現金払いと比較すると、支払いを一定期間遅らせることができるため、キャッシュフローに余裕ができます。

例えば、売上が入る前にほかの支払いが発生した場合、法人カードで決済することで支払いを先延ばしでき、売上が入ってからの引き落としが可能です。

資金繰りが厳しいスタートアップ時や個人事業主、中小企業などにとっては、資金の柔軟性がメリットになります。

ポイントを貯めることで経費削減につながる

法人カードには、利用代金に応じてポイントが獲得できるプログラムがあります。法人カードの種類によって異なりますが、0.5~1.0%のポイント還元を受けられるものが多いです。

貯めたポイントは、法人カードの利用代金に充てたり、商品やサービスの購入に使用できたりします。ポイントプログラムは、現金払いなどにはない法人カード(クレジットカード)ならではのサービスです。結果的に経費の削減につながります。

付帯する特典が利用できる

法人カードの種類によって、さまざまな付帯サービスや特典が受けられます。代表的な付帯サービスは、空港ラウンジサービスや海外旅行損害保険などが挙げられます。

旅行に関連するサービスが付帯しているため、出張が多い場合に利便性が高いといえるでしょう。

法人カードを使用する際の注意点

法人カードはメリットが複数ありますが、利用に関して注意点もあります。中にはトラブルに発展する可能性もあるため、対策も確認しておきましょう。

法人カードを使用する際の注意点

二重精算が起こらないようにする

領収書やクレジット売上票など、同じ取引で複数の書類が発生するため、誤って二重精算が起こる可能性があります。二重精算を防止するためには、次の対策をしてみてください。

  • 同じ取引の書類はホチキスなどでまとめておく
  • カードの利用明細と書類を照らし合わせて、二重精算していないか確認する

利用明細と書類を目視で確認することは、不正利用がないかを確認するのにも有効です。定期的に利用明細を確認しておきましょう。

法人カードの取扱ルールを定義・周知する

法人カードを利用する前に、代表者、経理担当者などでルールを決め、周知することが大切です。ルールを周知することで、不正利用防止につながります。

不正利用の例としては、ガソリン代や交通費などの私的利用、経費にならない買物などが挙げられます。

法人カードの取扱ルールとして、次のようなものを挙げると不正利用防止に有効です。

  • 事業に無関係の支払いには使用しない
  • ポイントは個人利用しない
  • 決済には上長の承認を得る
  • レシートや領収書、クレジット売上票などの書類を経理担当者に提出する など

このようなルールを決め、法人カードを使用する従業員に周知したうえでカードの利用を始めましょう。

また、法人カードの紛失や盗難被害に遭った際は、速やかに報告するように周知することも重要です。

追加カードの年会費・発行手数料を考慮する

法人カードの中には、追加カードが発行できるものもあります。代表者に加え、従業員用に法人カードを発行したい場合は、追加カードが発行できるカード会社を選びましょう。

追加カードには、年会費や発行手数料がかかるものがあります。複数枚発行する場合は、これらのコストを考慮したうえで、法人カードを選ぶことも大切です。

分割払い・リボ払いできない法人カードが多い

法人カードの支払方法は、一括払いがほとんどです。

高額な商品やサービスの購入を検討している場合は、金融機関で融資を受けるなど別の方法での対応を検討しましょう。

経費精算を効率化するなら「UPSIDERカード」

「UPSIDERカード」は、年会費無料で利用できます。また、追加カードの発行手数料も無料で、発行枚数の制限もありません。経費精算システム連携も可能で、経費処理の効率化が図れます。

法人カードの導入を検討している方は「UPSIDERカード」の特徴を確認してみてください。

簡単に証憑アップロードができる

領収書やクレジット売上票などの証憑登録は、スマートフォンアプリ(iOS、 Android(TM) )、Slack、WEB管理画面などでできます。スマートフォンアプリを利用すれば、外出先でも証憑登録できるため、提出忘れ防止に効果的です。

証憑アップロードの際、提出された書類が適格請求書の要件を満たしているか、電子帳簿保存法に対応しているかを自動判別してくれるため、経理担当者の業務効率化が図れます。

未提出の証憑があれば一覧化+ボタン1つでリマインドできる

証憑アップロードが完了していない取引がある場合は、WEB管理画面にて一覧で表示されます。未提出の書類は、カード会員にリマインドできるため、電話やメール、口頭、チャットなどで未提出の旨を伝えるやり取りは不要です。

UPSIDERカードを導入して喜ぶ声

UPSIDERカードの導入により、領収書などの証憑管理が容易になったり、ガバナンス強化されたりした企業様の声を紹介します。

事例1|カード明細と紙の領収書に悩んでいた企業様

株式会社バルクオム(以下、バルクオム)様は、メンズスキンケアブランド『BULK HOMME』を展開する企業であり、スキンケア業界における革新的なプレーヤーとして知られています。

バルクオム様では、急速な事業拡大に伴い会計処理に毎月数時間を要しており、この時間を削減して効率化することが急務となっていたことから、UPSIDERカードを導入しました。

結果、従来数時間かかっていた会計処理が、わずか数分で完結するようになりました。会計ソフトへの自動データ連携や、リアルタイムでの経費処理を実現しており、経理作業の時間を大幅に削減しています。

また、決済ごとの明細がリアルタイムで確認できるため、経理業務の透明性が向上しています。不正利用のリスクを軽減し、企業の財務健全性を保護するためのセキュリティ機能も充実しています。

毎月の会計処理時間を大幅に短縮し、経理部門の負担を軽減したことで、バルクオム様はさらなる事業成長へ注力可能に。UPSIDERカードは、経理業務のアナログ作業からの解放だけでなく、事業運営の効率化や透明性向上にもつながる法人カードです。

事例2|各部署の証憑集めに悩んでいた企業様

株式会社Photosynth(以下、フォトシンス)様は、革新的なIoTサービス「Akerun(アケルン)」を通じて、鍵のクラウド化とセキュリティの向上を実現している企業です。


東京証券取引所グロース市場に上場しているフォトシンス様は、業務の効率化と経営資源の最適化を目指していましたが、各部署からの証憑集めに膨大な時間と労力がかかるという課題を抱えていました。

特に、月次決算期間中の貴重なリソースを大きく消費することは、フォトシンス様でも課題だったのです。

そこで、UPSIDERカードを導入することにより、月初時点で95%以上の証憑回収を実現できました。月次決算期間中における作業の効率化が図られ、1人日分の工数削減に成功しています。

証憑のデジタル化と自動回収機能により、経理業務が大幅に改善され、経理部門はより戦略的な業務にリソースを割り当てることが可能になっています。

よくある質問

法人カード決済で発行された領収書は不要ですか?必要ですか?

領収書はクレジット売上票とセットで保管しておくことが望ましいです。領収書は、店舗側が代金を受け取っていないため証憑書類にはなりませんが、要件を満たせばインボイスとして認められる書類です。そのため、領収書が必要になる可能性があります。

ただし、経費計上の際は、クレジット売上票を提出しましょう。

法人カード決済で発行された領収書を紛失した場合、どうすればいいですか?

領収書を紛失した場合は、再発行が可能かどうかを確認しましょう。再発行が難しい場合は、法人カードの利用明細など、ほかの書類で対応できる可能性があります。領収書が発行されない取引の場合は、出金伝票を活用する方法もあります。

法人カード決済で発行された領収書は、インボイスとして認められますか?

次の6つの要件を満たしている場合は、インボイス(適格請求書)として認められます。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
  • 取引を行った年月日
  • 取引の内容(軽減税率の対象品目がある場合、その旨も記載)
  • 税率ごとに区分して合計した金額(税抜きまたは税込)、および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税など
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称