退職したらやるべき法人カードの手続きとは?解約しないと後悔する企業側のリスクと支払い責任

退職したらやるべき法人カードの手続きとは?解約しないと後悔する企業側のリスクと支払い責任

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3行でまとめると…

  • 退職時には法人カードの解約や名義変更がMUST。具体的な手続きは決済方法や退職者の役職によって変わる##first
  • 必要な手続きを怠ると支払いリスクが増し、カード会社から強制解約されることも。さらにトラブルの温床に…##second
  • 法人カードならUPSIDERカード。発行枚数無制限・限度額最大10億円で60,000社以上の導入実績!

    ##matome

備品の購入や業務用アプリの利用料支払いなど、さまざまな用途に役立つ法人カード。カードの種類によってはビジネス用途に限らず、光熱費の支払いや街中でのショッピングなどにも利用することが可能です。

そんな便利な法人カードは、会社を退職した後も使うことができるのでしょうか?

答えは「No」。法人カードは福利厚生の一環や業務用の決済ツールとして会社から貸与されるクレジットカードであり、会社を辞めたら原則利用することはできません。

そればかりか、退職時に必要となる法人カードの手続きを怠ると、会社、本人双方に大きなリスクが生じます。

具体的にどういった手続きをとるべきなのか。手続きに不備があった場合はどんなリスクがもたらされるのか。事例を交えながらご紹介します。

監修者 越智聖(税理士)

監修者

越智聖

税理士

松山市の税理士 越智聖税理士事務所、株式会社聖会計代表。経済産業省 認定経営革新等支援機関
“ヒトの為に動く”をモットーとした懇切丁寧な対応で、主に中国・四国全域の中小企業を中心に支援。業種としては不動産業、建設業、飲食業、宿泊業、保険業などを中心に、酪農業、漫画家といった珍しい業種のクライアントまで対応している。会計・税務はもちろんのこと、お客様のお悩み事を解決する総合的なコンサルティング、緻密な経営診断にもとづく経営コンサルティングなどを得意とし、一般的には7割が赤字企業といわれるなか、当事務所の顧問先の黒字率は6割を超えている。

目次

決済方法によって異なる退職時の法人カードの取扱い

まずは法人カードの決済方法による手続きの違いから見ていきましょう。

法人カードは決済方法によって「個人決済型」と「法人決済型」の2種類に分かれます。利用者の退職にあたっては、それぞれ誰が、どういった手続きをする必要があるのでしょうか?

決済方法によって異なる退職時の法人カードの取扱い

コーポレートカードに多い「個人決済型」の場合

「個人決済型」は、大企業向けのコーポレートカードに多い法人カードです。

主に福利厚生の一環として社内の希望者へ配布され、年会費は会社の負担となる一方、利用額は利用者本人の銀行口座から引き落とされます。カードの名義も利用者本人となり、ビジネス、プライベート問わず幅広く利用することが可能です。

「個人決済型」の場合、利用者の退職は基本的に会社側からクレジットカード会社へ伝えられ、退職日以降は基本的に利用できなくなりますが、担当者が失念していたりすると、退職後も会社が年会費を払い続けなければなりません。

余計なトラブルを避けるためにも、利用者本人が事前に手続きを済ませておくのがベターです。

具体的な手順としてはまず、法人カードを会社へ返却し、それまで法人カードで処理していた支払先の決済方法(公共料金、通信費の引き落としなど)を切り替えること。

そのうえで解約手続きを進め、必要であれば、代わりとなる個人向けクレジットカードの発行を申し込みましょう。

一般的なビジネスカードの「法人決済型」の場合

一方の「法人決済型」は、中小企業や個人事業主向けのビジネスカードで主流となっている法人カードです。

名義がカード利用者本人となるのは「個人決済型」と変わらないものの、年会費・利用額ともに会社の口座から支払われる点で異なります。

主な用途としてはオフィス用品の購入、出張費・交通費の支払い、広告費の引き落としなど。「法人決済型」の法人カードは会社から従業員・役員へ貸与される決済ツールであり、経費として認められないプライベートでの利用はNGです。

「法人決済型」の法人カードを利用していた社員・役員が退職する場合、手続きは会社側での対応となります。貸与していたカードを回収し、名義人が退職する旨をクレジットカード会社に伝えたうえで解約手続きを進めましょう。

なお、詳しくは後述しますが、こうした手続きを怠るとクレジットカードの利用規約違反となる可能性があります。

さらに「法人決済型」の場合、会社の代表者(経営者)がカードの連帯保証人となっているケースが多いため、退職者にカードを利用されると代表者に債務が生じることも。

こうしたリスクを回避するためにも、退職にともなう手続きはガバナンスにしたがって滞りなく進めるのが大切です。なお、法人カードの種類についてはこちらでもご紹介しています。あわせて参考にしてみてください。

退職の形態によって異なる法人カードの手続き

次は従業員が退職する場合と代表者が退職する場合の手続きの違いや、会社が廃業する際に必要となる対応をケース別に見ていきましょう。

退職の形態によって異なる法人カードの手続き

従業員が退職するケース|回収・解約

従業員が退職する場合は先述したとおり、貸与していた法人カードを回収(従業員は返却)し、支払い先の決済方法と解約手続きを進めるのが基本的な流れです。

解約については電話連絡後、郵送されてくる解約届の記入・返送が必要となることもありますが、近年はオンラインから手続きできるカード会社が増えているようです。

会社側、従業員側のそれぞれの対応を以下の表にまとめてみました。

会社従業員
ステップ1従業員に貸与していた法人カードを回収会社から貸与されていた法人カードを返却
ステップ2支払い先の決済方法を変更支払い先の決済方法を変更(※)
ステップ3解約手続き解約手続き(※)
※個人決済型の法人カードの場合

このなかでとりわけ注意したいのが、支払い先の決済方法の変更手続き

スタートアップや中小企業のなかには、経理スタッフ名義の法人カード(法人決済型)でSaaSやチャットアプリの利用料金を支払っているところが少なくありません。

経理スタッフの退職にともない、決済方法を変更しないまま法人カードを解約すると、支払いが止まり、SaaSやアプリの利用もストップしてしまいます。

業務に支障をきたすことがないよう、あらかじめ「何をどのカードで支払っているか」洗い出し、決済方法の変更手続きを済ませておきましょう。この点は個人決済型の法人カードで光熱費や通信費を支払っていた場合も同じです。

なお、法人カードは支払い残高が残っている状態でも解約でき、解約後は支払い残高がゼロになるまで支払い(口座からの引き落とし)が続きます。

また、法人カードのなかにはポイントが付与されるものがありますが、カード会社によっては解約するとポイントが失効してしまうことも。まとまった額のポイントが貯まっている場合は、できるだけ解約前に使っておくのがいいでしょう。

代表者が退職するケース|解約・名義変更

代表者(会社に雇用されている経営者)が退職する場合は、従業員が退職する場合と比べて手続きがやや複雑になります。

一般的な法人カードの多くは代表者個人の信用をもとに与信され(利用が認められ)、代表者を本会員として発行されるからです。

具体的な手続きは、解約もしくは代表者の名義変更のいずれか。どちらの手続きが必要となるかはカード会社の規約によって決まります。

たとえば、楽天ビジネスカードは、退職などにともない会社の代表者が変わった場合、一度解約し、新しい代表者があらためて新規で申し込まなければなりません。それに対してJCB法人カードは、以下の書類を提出し、名義を変更する必要があります。

  • 変更届(法人代表者兼実質的支配者変更届)
  • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
  • 新しい代表者の本人確認書類(運転免許証など)

登記事項証明書については一度解約し、新規で申し込む場合も提出を求められることが多いので、時間に余裕をもって準備しておきましょう(法務局で申請し、手数料を支払うことで取得可能)。

【参照元】
楽天ビジネスカードの代表者が変わった場合のお手続き方法について|楽天カード
よくあるご質問|JCB法人カード

なお、代表者が退職する場合の解約や名義変更手続きは、代表者自身が行わなければなりません。

解約する場合、再度申し込みをして審査を通るまで、付帯カード(従業員へ貸与する法人カード、社用車のETCカードなど)も一時的に利用できなくなるため、社内に混乱をきたさないよう事前に周知しておきましょう。

廃業したケース|解約・退会

会社が廃業するということは、事業を続けられなくなるということ。廃業の際はビジネス向けのクレジットカードである法人カードの解約・退会が必要です。

廃業する会社の多くは債務の整理が終わるまで法人口座を残すため、廃業後もある程度の期間は法人カードを利用することはできます。

その点でいつ解約するかは代表者の判断次第ではありますが、事業を続けられなくなった以上、いずれは必ず解約しなければなりません。

特別な事情がない限り、できるだけ早めに手続きを済ませておいたほうがいいでしょう。

退職者の解約を放置するリスク

続いて、退職にともなう手続きを怠った法人カードがどういったリスクをもたらすのか。あらためて2つに分けてご紹介します。

退職者の解約を放置するリスク

退職者の利用でも会社に支払い義務が生じる

1つめは会社側に支払い義務が生じてしまうこと。

法人決済型の場合、退職者が法人カードを利用すると、法人口座での決済を通じて会社がカード料金を支払わなければなりません。また、個人決済型の場合も、カードが有効な限り毎年発生する年会費が会社側の負担となります。

さらに、適切な手続きがとられないまま放置された法人カードは、トラブルの温床になることも。

たとえば、退職した元社員が自分のクレジットカードと間違えて以前の会社の法人カードで買い物をしてしまった場合。利用金額や日時、店舗名の確認から返還の請求、支払いまで、お互いに神経をすり減らす対応に時間を費やしてしまうことになります。

また、前述のとおり法人カードの多くは会社の代表者が連帯保証人となっているため、退職者の不払いによって経営者個人が催促や請求を受ける可能性もあります。

クレジットカード会社の規約違反になる

2つめはクレジットカード会社の規約に抵触してしまうこと。

法人カードに限らず、クレジットカードは名義人本人だけが使える決済ツールです。家族や元同僚であっても、名義人以外の利用は一切認められず、名義人が変わる場合はカード会社に届け出なければなりません。

名義人が会社を退職したにもかかわらず、解約、名義変更といった手続きを怠り、退職者名義のカードを他の社員・役員に渡してそのまま利用し続けると、クレジットカード会社の規約違反となります。

場合によっては法人カードの本会員である代表者が利用停止、強制解約といった処分を受け、信用情報に傷がついてしまうこともあるので、必要な手続きは滞りなく済ませておきましょう。

退職時の法人カードの取扱いは各社の利用規約に従おう!    

続いてはここまでの内容をふまえつつ、クレジットカード会社の利用規約をご紹介します。法人カードの支払い責任や名義の変更について、法人カードを提供している大手4社はどういった規約を設けているのでしょうか。

退職時の法人カードの取扱いは各社の利用規約に従おう!  

アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カード

アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カードは会員規約のなかで、自社のカードを利用する会社と基本カード会員(代表者)はすべての債務に対して責任を負い、会員情報に変更があった際は速やかに届け出をしなければならないとしています。

第2条(支払責任)2.法人会員および基本カード会員は、追加カード会員による追加カード使用により発生する債務その他追加カードに関して発生する一切の債務の責任を連帯して負うものとします。
第14条(届出事項の変更)1. 会員は、その住所、氏名、Eメール・アドレス、会社名、会社住所、会社代表者およびその印鑑もしくは署名鑑、カード利用代金等の指定支払口座または支払方法等当社に届け出た事項に変更があった場合には、ただちに当社に届け出ていただきます。
【引用元】アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カード会員規約|アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド

JCB法人カード

JCB法人カードでは、民法の規定も盛り込みながら、アメリカン・エキスプレス・コーポレート・カード同様に法人・代表者の支払責任を明文化し、利用者情報の変更についても速やかに届け出なければならないとしています。

第2条 (支払責任および連絡責任者)1.法人会員および代表使用者は、会員によるカード(第3条第2項に定めるカード情報を含む。)の利用代金その他本規約において法人会員または支払責任者が負担するとされる一切の債務について連帯して当該債務を負担するものとし(民法第436条)、法人会員および代表使用者のいずれか一方に対する履行の請求は、請求を受けていない他の者に対しても、その効力を生じるものとします。
第10条 (届出事項の変更)1.会員が両社に届け出た法人会員に係る法人名、法人代表者、代表使用者、連帯保証人、事業内容、実質的支配者、所在地、電話番号およびお支払い口座(第27条に定めるものをいう。)、Eメールアドレス等、ならびにカード使用者に係る氏名、住所、電話番号、暗証番号、Eメールアドレス等(以下「届出事項」という。)について変更があった場合には、両社所定の方法により遅滞なく両社に届け出なけれなりません。
【引用元】会員規約(一般法人用)|JCBカード

楽天ビジネスカード

楽天ビジネスカードの規定は他のカード会社と比べると項目数が少なくシンプルですが、そのなかでもやはり、会社の支払い責任や連帯保証責任に言及しています。

第5条(支払方法)本カードの利用代金は、会員が指定し当社が適当と認めた本会員が経営する法人(以下「法人」という)名義の預金口座から、口座振替の方法により支払うものとします。
第6条(連帯保証)法人は、会員規約及び本特約の各条項を承諾のうえ、本契約上の一切の債務につき、本会員と連帯して支払いの責を負うものとします。
【引用元】楽天ビジネスカード特約|楽天カード

三井住友カード ビジネスオーナーズ

三井住友カードビジネスオーナーズの規約では、パートナー(法人カードを貸与される従業員・役員)に関する条文のなかで、代表者が負う賠償責任に触れています。

また、届出事項の変更についても、他のカード会社と同様のルールを設けています。

第2条(パートナー会員)3.本会員は、パートナー会員に対し本規約の内容を遵守させるものとします。本会員は、パートナー会員が本規約の内容を遵守しなかったことによる当社の損害(パートナーカードの管理に関して生じた損害を含む)を賠償するものとします。
第4条(届出事項の変更等)2.氏名・暗証番号・国籍・在留資格・在留期間・決済口座・勤務先・支払預金口座確認届、その他の項目(以下総称して「届出事項」という)を変更する場合その他当社が必要と認める場合には、会員は、所定の届出用紙を提出する方法により変更事項の届出を行うものとします。
【引用元】三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(ビジネスカード for Owners・ビジネスオーナーズ用)|三井住友カード

【独自調査】退職後に放置した場合の体験談

ここまで退職時に必要となる法人カードの手続きや、それを怠ることで生じるリスクについてご紹介してきましたが、実際に法人カードの利用や解約にあたってはどういったトラブルが起きているのでしょうか?

2023年7月、当社は法人間決済における不安や実体験に関するアンケート調査を行いました。

その結果、経理担当者の約70%が法人間決済で「ヒヤッとした経験」があり、3人に1人が「法人カードと個人のクレジットカードを間違えて、プライベートで利用された」と回答。

さらに全体の31.7%が、退職時の法人カード回収漏れによる情報流出と不正利用に不安を感じていると回答しました。

こうしたリスク、不安を払拭するにはまず、本記事でご紹介した退職時の手続きをきちんと行うこと。そのうえで法人カードそのものに利用金額や利用期間、用途を制限できる機能があれば、情報漏洩や不正利用を防ぎやすくなるはずです。

退職時のトラブルを回避するならUPSIDERがおすすめ

当社が提供している法人カード「UPSIDER」には、退職時の手続き漏れなどに起因するトラブルを未然に防ぐ、2つの機能が搭載されています。

導入実績はトータル3万5,000社以上。最大10億円の限度額とあいまって、2022年に東証グロースに上場した企業の20%以上に利用されています。

退職時のトラブルを回避するならUPSIDERがおすすめ

従業員の不正を防ぐ「利用制限機能」

「UPSIDER」は法人カード1枚1枚に対して利用範囲と利用上限額の設定が可能です。

たとえば、エンジニアに対してソフトウェア開発プラットフォームの定額料金のみ支払えるカードを配布したり、総務のメンバーが利用するカードには、オフィス用品を購入するAmazonやASKULの決済だけに用途を制限したりすることができます。

従業員が退職する際、万が一カードの回収や解約手続きが漏れてしまっても、退職後に不正利用されたり、個人用のカードと誤って使われるようなことはありません。

AIによる「リマインド通知機能」

さらに「UPSIDER」にはAIによるリマインド通知機能も搭載されています。当社が提供する業務支援サービス「UPSIDER Coworker」、Slackと連携させることで、従業員が未提出の書類や帳票をチャットに自動通知し、アップロードと返信を促します。

この機能を活用すれば、経理の業務効率は大幅に改善され、退職時の法人カード回収も滞りなく行えるようになります。

【導入事例】経理 × ITで不正リスクから社員を守る!

クラウド録画・映像管理プラットフォーム「Safie」を運営するセーフィー株式会社(東京都品川区)では、限度額の低さから複数社・合計約30枚の法人カードを利用せざるを得ず、月次決算に大きな工数がかかっていました。

加えて2021年に上場し、従業員の数が400名近くになったことで、誰が何に経費を使っているのか把握するのが難しい状況に…。事業拡大にともなうガバナンスの強化が課題となっていました。

そこで「UPSIDER」を導入したところ、用途・部門ごとに必要な法人カードを発行し、それぞれ利用上限額を設けることが可能に。さらにSlackとの連携によって利用状況をリアルタイムで検知できるようになりました。

その結果、意図しない決済やミスを防ぎ、社員をリスクから守る大幅なガバナンスの強化につながりました。

さらに、導入後はfreee会計との連携機能も活用し、決済内容の確認や仕訳計上といった月末月初の経理業務の工数を、従来の約30%にまで削減しています。なお、株式会社セーフィー様へのインタビューの模様は、こちらに詳しくまとめています。

まとめ

今回は退職時の法人カードの手続きについてご紹介しました。

従業員や役員の退職にあたって必要な手続き、処理を怠ると会社と代表者に債務のリスクが生じるうえ、従業員と会社との間でのトラブルにもつながりかねません。

カード会社の利用規約をきちんと確認し、滞りなく手続きを進めましょう。

そのうえで法人カードの利用にまつわるヒューマンエラーを防ぎ、不正利用や情報利用のリスクを払拭するには、法人カードの機能も大切なポイントとなります。

今回取り上げたセーフィー株式会社のように、ガバナンスの強化に課題を感じている会社は、利用制限機能やリマインド通知機能の付いた法人カードの導入がおすすめです。