売掛金で資金調達する方法とは?ファクタリングと売掛債権担保融資について解説

売掛金で資金調達する方法とは?ファクタリングと売掛債権担保融資について解説

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3行でまとめると…

  • イニシャルコストが高く回収サイトが長い製造業は、資金繰りに苦労するケースが多い##first
  • 資金ショートによる黒字倒産を防ぐため、早めに資金調達をすることが重要である##second
  • 資金繰り改善ならまずは支払い.com 。手数料4%・審査なしで支払いを最長60日先延ばし!

    ##matome

日本では商品を引き渡したあと一定期間後に代金を受け取る、いわゆる「掛取引」が一般的に行われています。しかし、信用取引には一定のリスクがつきまとい、取引先の業績次第では支払い遅延や貸倒れが発生する可能性もあります。

また、掛取引における「支払いサイト」は、資金繰りに多大な影響を及ぼす要因です。運転資金が不足し、資金繰りの悪化が懸念される場合は、売掛金で資金調達する方法もあります。具体的には、「ファクタリング」や「売掛債権担保融資」などの利用です。当記事では、売掛金で資金調達する方法について詳しくご紹介します。

監修者 寺田真之(税理士・公認会計士)

監修者

寺田真之公認会計士・税理士事務所合同会社HAKU代表。公認会計士・税理士として、多種多様なクライアントの税務を支援。大手会計事務所での上場企業の対応経験から個人の申告まで業種問わず幅広く対応し、税務申告に関しては独立以後延べ1,000件以上の申告を行う。
【保有資格】
・税理士(登録番号:140541)
・公認会計士(登録番号:36029)
【経歴】
・東京理科大学工学部 卒業
・2013年〜2019年:KPMGあずさ監査法人にて会計に携わる
・2019年〜2023年:BlueWorks株式会社 代表取締役、税理士法人BlueWorksTax 社員税理士
・2023年〜:現職

目次

売掛金・売掛債権で資金調達する方法

売掛金は売掛債権とも呼ばれ、商品やサービスを提供した企業が取引先から代金の支払いを受ける権利を指します。売掛金・売掛債権は、原則として発注書や納品書、売買契約書などで取り交わした支払期日まで現金化できません

しかし、商品・サービスの提供から代金の支払いまでの期間、いわゆる「支払いサイト」の間に運転資金が不足しそうな場合は、売掛金・売掛債権を使って資金調達することも可能です。ここでは、売掛金・売掛債権で資金調達する方法を具体的にご紹介します。

売掛金・売掛債権で資金調達する方法

ファクタリング

「ファクタリング」とは、売掛債権の買取サービスです。支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、支払期日を待たずに売掛債権を現金化できます。ファクタリングでは売掛元ではなく売掛先の信用が重視されるため、自社の信用に自信がない場合でも利用しやすい資金調達方法です。

また、売掛債権の信用力によって買取率は異なっており、信用力が高ければ高い買取率で、低ければ低い買取率で売掛債権は買い取られます。簡易な審査で最短即日売掛債権を現金化できるため、急な資金調達にも適した方法です。

売掛債権担保融資(ABL)

「売掛債権担保融資」は英語では「ABL(Asset Based Lending)」といい、企業が保有する商品や原材料などの在庫・設備機械・売掛債権などの資産を担保とする融資制度です。将来的に現金化される動産や債権を担保として提供し、融資を受ける資金調達方法となります。

不動産がなくても動産や債権で融資を受けられるというメリットがある一方、返済が滞ると大切な資産を失ってしまうというデメリットもある方法です。

また、ファクタリングとは異なりABLは融資であるため、必ず返済しなければなりません。一定のデメリットもあるABLですが、担保を設定するため一般的な無担保ローンよりも低金利で融資を受けられます。不動産など担保として提供する資産がない場合は、ABLが最適です。

売掛債権証券化

「売掛債権証券化」とは、売掛債権をSPV(Special Purpose Vehicle)と呼ばれる証券化やプロジェクト・ファイナンスを目的とした特別目的事業体に譲渡し、現金化する手法です。

売掛債権の信用力に応じて一定額が支払われるため、売掛債権の買取サービスであるファクタリングに近い資金調達方法といえるでしょう。SPVは売掛債権の支払期日に売掛先から代金を受け取るため、売掛元が代金を返済する必要はありません

また、売掛債権を譲り受けたSPVは、売掛債権の信用を担保に証券化し投資家に発行します。なお、売掛債権の証券化はSPVを通じてのみ行うことが認められており、SPVは売掛元と投資家の仲介役と捉えることも可能です。

ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の違い

ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)について個別に解説する前に、これらの違いについて大まかに確認しておきましょう。ファクタリングとABLの主な違いは、下記の通りです。

ファクタリング売掛債権担保融資(ABL)
契約の種類売買契約(債権の売却)金銭消費貸借契約(債権等を担保とした融資)
返済の要否不要必要
取引対象債権在庫や設備機械などの動産債権
資金調達先ファクタリング会社銀行や信用金庫などの金融機関ノンバンク
資金調達の上限額債権から手数料を控除した額担保の評価額
審査で重視される事項売掛先の信用債権の保全性売掛元の信用担保の価値
審査の厳しさ優しい厳しい
資金調達にかかる時間短い(最短即日)長い(2~4週間程度)
融資・資金調達の期間短期(一度債権を売却したら終了)長期(中長期の資金調達も可能)
利息や手数料2者間:8.0~18.0%程度3者間:2.0~10.0%程度年利2.0~10.0%程度
不良債権化した場合の返済義務なし(ノンリコースの場合)あり

ファクタリングとは?

売掛債権は、一定の手段を取ることで支払期日前に現金化できることを解説しました。ここでは、売掛債権の代表的な流動化手法である「ファクタリング」について詳しく解説します。

ファクタリングとは?

売掛債権の買い取りサービス

「ファクタリング」とは、支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい現金化するサービスです。ファクタリングでは売掛先の信用力が重視され、売掛元は審査の対象外となります。そのため、自社の信用に自信がない場合でも利用しやすい資金調達方法です。

また、簡易な審査で最短即日利用できるため、急な資金調達にも向いています。なお、ファクタリングは売掛債権の買取サービスであるため、融資のように返済の必要はありません。売掛先の経営破綻などで不良債権化した場合でも、原則として償還は不要です。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングには、売掛元とファクタリング会社の2者で行う「2者間ファクタリング」と、これらの2者に売掛先を加えた3者で行う「3者間ファクタリング」があります。

2者間ファクタリング

2者間ファクタリングは、売掛元とファクタリング会社の2者間で契約を取り交わし行うファクタリングです。2者間ファクタリングの場合は、ファクタリングの利用を売掛先に通知する必要がないため、迅速に売掛債権を現金化できます

また、取引先にファクタリング利用の事実を知られることもないため、今後の取り引きに影響を及ぼすことがない点もメリットです。

2者間ファクタリングの契約を締結すると、ファクタリング会社から手数料を差し引いた売却代金が支払われます。利用者は取引先から売掛金を受け取り次第、ファクタリング会社へ送金しなければなりません。

具体的には、下記の流れでファクタリングが実行されます。

  1. 売掛先(取引先)へ請求書を発行(売掛債権の発生)
  2. ファクタリングの申込み
  3. 売掛債権の審査
  4. 買取条件の確認と契約
  5. ファクタリング会社から売掛元(利用者)へ、手数料を差し引いた売却代金の振り込み
  6. 売掛金の入金があり次第、売掛元(利用者)からファクタリング会社へ代金の振り込み

なお、2者間ファクタリングは売掛元を経由して代金を回収する都合上、買取手数料が高めに設定される傾向にあります。手数料を少しでも節約したい場合は、次に紹介する3者間ファクタリングの利用も検討してみましょう。

3者間ファクタリング

3者間ファクタリングとは、売掛元・ファクタリング会社・売掛先の3者で合意し行われるファクタリングです。3者間ファクタリングでは取引先からファクタリング会社へ直接代金が振り込まれるため、買取手数料が低めに設定される傾向にあります

ただし、3者で合意を形成するため、売掛債権の現金化に時間がかかること、ファクタリング利用の事実が取引先に知られてしまうことなどがデメリットです。場合によっては、業績の悪化を懸念され、今後の取り引きに影響を及ぼす可能性もあります。

3者間ファクタリングの契約を締結する場合、まずは3者の合意形成が必要です。3者間合意に基づき契約を締結すると、ファクタリング会社から手数料を差し引いた売却代金が支払われます。売掛金については、売掛先から直接ファクタリング会社に送金されるのが2者間ファクタリングとの違いです。

具体的には、下記の流れでファクタリングが実行されます。

  1. 売掛先(取引先)へ請求書を発行(売掛債権の発生)
  2. 3者の合意形成と、ファクタリングの申込み
  3. 売掛債権の審査
  4. 買取条件の確認と契約
  5. ファクタリング会社から売掛元(利用者)へ、手数料を差し引いた売却代金の振り込み
  6. 売掛先(取引先)から直接ファクタリング会社へ代金の振り込み

3者間ファクタリングは、比較的代金回収のリスクが低いことから、買取手数料が低い傾向にあります。しかし、利用の事実が取引先に知られることで信頼関係が悪化してしまう可能性もあるため、利用は慎重に検討しなければなりません。

ファクタリングの種類

さらに、ファクタリングには売掛債権を買い取る「買取型」と、売掛債権を保証する「保証型」の2種類があります。

買取型

買取型のファクタリング、いわゆる「買取ファクタリング」は、売掛債権をファクタリング会社が買い取り現金化するサービスです。一般的に、ファクタリングというと買取型を指し、当記事でご紹介する内容も断わりのない限り買取ファクタリングに関する内容となります。

買取ファクタリングの目的は、売掛債権の売却による資金調達です。支払期日前の売掛債権を売却することで、資金繰りを改善することを目的としています。なお、従来は「債権譲渡禁止特約」が付帯された売掛債権はファクタリングができませんでした。

しかし、2020年施行の改正民法では、債権譲渡の効力は原則有効となります。ただし、不良債権はファクタリングができないので注意が必要です。

保証型

保証型のファクタリング、いわゆる「保証ファクタリング」は、売掛債権の貸倒れを回避する保険サービスです。万が一取引先が経営破綻し不良債権化した場合や、経営悪化で支払い遅延が生じた場合、売掛先の信用力に応じて決まる保証の範囲内でファクタリング会社が保証金を支払います。

保証ファクタリングの目的は、貸倒れリスクの回避です。買取ファクタリングと異なり、資金調達を目的とはしていません。利用者は保険料に相当する利用料を支払い、売掛債権を保証してもらいます。なお、保証金の支払いは売掛債権の回収が困難であると判断された場合のみ行われるため、保証金の受け取りまでに一定の時間がかかる点に注意が必要です。

償還請求権の有無

ファクタリングを利用する際に注意しなければならないのが、「償還請求権」の有無です。償還請求権とは、債務者(売掛先)が売掛金を支払えなくなった場合、債権者(売掛元)に損害の一部を請求する権利です。ここでは、償還請求権ありの場合と、償還請求権なしの場合の違いを解説します。

償還請求権あり(ウィズリコース)

「償還請求権あり(ウィズリコース)」の場合、信用力のある金融機関と比較的安い手数料でファクタリングを契約できる点がメリットです。一方、不良債権化した場合は売掛金を負担しなければならない点は大きなデメリットといえるでしょう。また、ウィズリコースの場合は債権者(売掛元)も審査対象となるため、自社の信用力も必要です。さらに、審査には2週間程度の時間を要するため、急な資金調達にも適していません。

償還請求権なし(ノンリコース)

「償還請求権なし(ノンリコース)」の場合、万が一不良債権化したとしても売掛金を負担しなくてもよいという点が一番のメリットです。債務者(売掛先)の簡易な審査しか行われないため、債権者(売掛元)の信用力は不要で最短即日売掛債権を現金化できます

しかし、比較的手数料が高いという点がデメリットです。また、ノンリコースのファクタリングを提供するのは独立系企業が多く、なかには闇金のような悪徳業者も存在します。契約する際は、買取条件を慎重に確認するなど十分注意しましょう。

ファクタリングの5つのメリット

素早く簡単に利用できるなど、ファクタリングはメリットの多い資金調達方法です。ここでは、ファクタリングの5つのメリットをご紹介します。

ファクタリングの5つのメリット

素早く資金調達できる

償還請求権なし(ノンリコース)の買取型2者間ファクタリングの場合、最短即日で素早く資金調達が可能です。金融機関などの融資を受ける場合は、審査のため資金調達まで数週間から数ヶ月かかることもあります。

一方で、ファクタリングの場合は簡易な審査のみで最短即日利用できるため、急な資金調達にも最適です。

利用者の信用力は必要ない

償還請求権なし(ノンリコース)のファクタリングの場合、取引先(売掛先)の信用のみが審査されるため、利用者(売掛元)の信用力は必要ありません

金融機関などの融資の場合は自社の信用力が問われるため、信用情報に問題があるいわゆる金融ブラックで融資を受けることは難しいでしょう。

一方で、ファクタリングであれば自社の信用力を審査されることがないため、赤字決算・債務超過・税金滞納などの状態でも利用が可能です。

担保・保証人が必要ない

償還請求権なし(ノンリコース)のファクタリングの場合、売掛債権の信用に基づく買取サービスであるため、担保や保証人が不要です。

金融機関の一般的な融資を受ける場合、不動産などの担保や連帯保証人・保証人などの人的担保の設定を求められます。

ファクタリングは、担保や保証人を用意できない中小企業や個人事業主でも利用しやすい資金調達方法です。

企業規模や業種・業態を問わず利用できる

利用者(売掛元)の信用力を問わないファクタリングは、企業規模や業種・業態を問わず利用できる資金調達方法です。

取引先(売掛先)の財務状況に問題がなければ、製造業・小売業・卸売業・不動産業・建設業・人材派遣業・医療福祉業など、その業種・業態は問いません。

企業規模についても同様に、個人事業主や中小企業から大企業まで、さまざまな規模の企業が利用可能です。

不良債権化しても返済の義務がない

償還請求権なし(ノンリコース)の買取ファクタリングであれば、取引先(売掛先)の経営破綻などで万が一不要債権化した場合でも、返済の義務はありません

また、売掛債権保証サービスである保証ファクタリングを利用することでも、貸倒れリスクを回避できます。

ファクタリングの5つのデメリット

一方、ファクタリングには一定のデメリットが存在するのも事実です。ここでは、ファクタリングの5つのデメリットをご紹介します。

ファクタリングの5つのデメリット

一定の手数料がかかる

ファクタリングには一定の手数料がかかります。特に、償還請求権なし(ノンリコース)の2者間ファクタリングの場合は、比較的高い手数料が必要です。

なお、買取手数料は売掛債権の信用力によって異なります。また、ファクタリング会社によっても水準が異なるため、利用する際は適切な手数料のファクタリング会社を選択することが重要です。

繰り返し利用すると資金繰りが悪化する懸念もある

ファクタリングには手数料がかかるため、繰り返し利用すると利益が目減りし資金繰りが悪化する懸念もあります。

ファクタリングは緊急手段と考え、金融機関の融資など他の資金調達方法についても検討するようにしましょう。急な資金調達が必要な場合に限り、ファクタリングを利用するのがおすすめです。

売掛先に資金繰りの悪化を懸念される

3者間ファクタリングの場合、ファクタリングを利用した事実を取引先(売掛先)に知られてしまいます。資金繰りの悪化を懸念され、今後の取り引きに影響を及ぼしてしまうかもしれません。

3者間ファクタリングを利用する場合は丁寧に説明し、取引先(売掛先)の理解を得ることが重要です。

売掛先の業績が悪いと利用できないこともある

利用者(売掛元)の業績を問わないファクタリングは、原則として取引先(売掛先)の業績を重視します。

自社の業績や信用に問題があっても利用できる点はメリットですが、取引先の業績に問題があると利用できない可能性がある点には注意が必要です。

まれに悪徳事業者が存在する

ファクタリング会社のなかには、まれに悪徳事業者が存在するため注意が必要です。

特に、独立系企業の多い償還請求権なし(ノンリコース)のファクタリングを提供している事業者には注意が必要です。法外な買取手数料を請求されたり、売掛債権の買い取りを謳いながら実態は売掛債権担保融資(ABL)であったりするケースが報告されています。

ファクタリングを利用する場合は、契約内容を慎重に確認しましょう。

売掛債権担保融資(ABL)とは?

「売掛債権担保融資(ABL)」は、ファクタリングと並んで代表的な売掛債権の流動化手法です。ここでは、売掛債権担保融資(ABL)について詳しくご紹介します。

売掛債権担保融資(ABL)とは?

在庫や売掛金などの流動資産を担保とする融資

「売掛債権担保融資(ABL)」とは、在庫や売掛金などの流動資産を担保とする融資制度です。

一般的な融資の場合は、不動産を担保として設定します。そのため、担保に設定するための不動産を所有していなかったり、すでに抵当権が設定され担保余力が少なかったりする場合は、融資を受けられません。

そのような場合に、企業が保有する商品や原材料などの在庫・設備機械・支払期日前の売掛債権などの資産を担保に融資を受けられるのが売掛債権担保融資(ABL)です。

発注時点で融資を可能にするPOファイナンス

ABLは売掛債権を対象とした融資であるため、利用するには債権が発生する商品の販売やサービスの提供を行う必要があります。事業の完了までに長い期間を要する案件の場合は売掛債権が発生しないため、ABLを利用できませんでした。

そのようなケースでは、PO(Purchase Order)ファイナンスを利用することで、将来受け取る予定の代金を担保に融資を受けることが可能です。資金繰りに余裕が生まれ、従来困難だった大規模案件も受注できます。また、従来の融資では対応できない短期借入の代替としても利用が可能です。

売掛債権担保融資(ABL)の注意点

不動産を持たない個人事業主や中小企業にとって、ABLは有効な資金調達方法です。しかし、ABLの利用にはいくつか注意点もあります。

過剰担保を防ぎ適正な担保を提供する

ABLで商品・原材料などの在庫や設備機械をはじめとした動産、保有する売掛債権などを担保として提供する場合、市場価値の評価は金融機関によって異なるのが一般的です。そのため、金融機関によっては担保の保全に必要となる限度以上の過剰担保を求められる可能性があります。ABLを利用する場合は、金融機関の評価が高い取引先の売掛債権を中心に、適正な担保を提供するよう心がけましょう。

金融機関に定期的な報告が必要となる

ABLで担保となる在庫や売掛債権は流動的であるため、企業は定期的に担保の管理状況を金融機関へ報告するよう義務付けられるのが原則です。流動的な担保の状況を報告するには、一定の手間がかかります。また、報告義務を果たすためには、社内体制を構築しなければなりません。ABLで資金調達をすると定期的な報告義務を課される、ということを覚えておきましょう。

債権譲渡禁止特約に気をつける

担保に提供する資産が売掛債権である場合は、債権譲渡禁止特約の有無に気をつけましょう。従来、債権譲渡禁止特約が付帯された売掛債権は担保に設定できませんでした。

しかし、2020年に施行された改正民法では規制が緩和され、債権譲渡の効力は原則有効となります。今後は債権譲渡禁止特約の判断基準が変わることも考えられるため、ABLを利用する場合は注意しましょう。

売掛債権担保融資(ABL)の4つのメリット

個人事業主や中小企業など担保となる不動産を持たない企業にとって、ABLはメリットの多い資金調達方法です。ここでは、売掛債権担保融資(ABL)の4つのメリットをご紹介します。

売掛債権担保融資(ABL)の4つのメリット

保証人や不動産などの担保がなくても利用できる

ABLは在庫や売掛債権などの流動資産を担保として設定し、個人保証や不動産担保に依存しない融資制度です。一般的な融資では必須のことが多い不動産担保を求められることはありません

また、人的担保については、企業の代表者を連帯保証人に設定するよう求められるケースもありますが、その他の保証人については原則不要です。

そのため、ABLは、保証人や不動産などの担保を持たない個人事業主・中小企業でも利用しやすい融資制度となっています。

内部管理体制を整備する機会になる

ABLでは、動産や売掛債権が担保となります。そのため、金融機関に動産・売掛債権の担保価値を高く評価してもらえるよう、内部管理体制の整備・強化が必要です。商品や原材料の在庫管理、設備機械の設備管理、売掛金の債権管理を徹底しなければなりません。内部管理体制を整備し、売掛金は期日までにしっかり回収するなど、資産管理を適切に行う良い機会となるでしょう。

金融機関との信頼関係構築に役立つ

ABLを利用した場合、企業は定期的に資産の管理状況を金融機関に報告しなければなりません。報告を受けた金融機関は企業の経営状況を把握できるため、企業に対し適切なアドバイスをすることが可能です。このようなやり取りを通して、企業と金融機関の信頼関係は醸成されます

金融機関との信頼関係は、事業運営にとって非常に重要です。金融機関との信頼関係を構築する意味でも、ABLは有効な資金調達方法といえるでしょう。

長期的な資金繰りの安定に役立つ

動産・売掛債権を担保とするABLの融資期間は原則1年以内ですが、債権譲渡登記を行うことで5~7年以内の融資を受けることも可能です。短期の資金調達に向いたファクタリングとは異なり、ABLは中長期的な資金繰り安定に役立ちます。なお、ABLで融資を受けている間は、一定の資産さえ確保していれば担保権を設定した在庫を販売しても全く問題ありません。

売掛債権担保融資(ABL)の4つのデメリット

一方、融資を受けるための手続きが煩雑など、ABLには一定のデメリットがあるのも事実です。ここでは、売掛債権担保融資(ABL)の4つのデメリットについて解説します。

売掛債権担保融資(ABL)の4つのデメリット

手続きが煩雑

ABLのデメリットの一つが、手続きの煩雑さです。具体的には、下記の流れでABLは実行されます。

  1. 担保設定する売掛債権の決定
  2. 売掛先に通知する・承諾を得る
  3. 融資の申し込み
  4. 金融機関による売掛債権の調査
  5. 金融機関の審査承認
  6. 金銭消費貸借契約書の締結・譲渡担保差し入れ
  7. 融資の実行
  8. 法務局に登記申請(債権譲渡登記制度を利用する場合)
  9. 担保の管理状況について金融機関に定期報告

まず、売掛債権を担保に融資を受ける場合は、取引先(売掛先)に通知したり承諾を得たりしなければなりません。場合によっては、取引先と同意書を取り交わす必要もあります。

取引先に通知することで信用上の懸念がある場合は、「債権譲渡登記制度」を利用することで取引先に知られることなく融資を受ける、いわゆるサイレント方式を選択することも可能です。ただし、その場合は法務局に登記申請を行わなければならないため、手続きはより煩雑となります。

売掛先との関係性が悪化する可能性もある

登記申請を行わずにABLを利用する場合、取引先(売掛先)に通知したり承諾を得たりする手続きは必須です。

規制の緩和で債権譲渡禁止特約などが付帯された売掛債権でも原則担保設定が可能となりましたが、自社の売掛債権を担保に融資を受ける行為を快く思わない取引先もいるかもしれません。経営悪化などを懸念し、場合によっては取引削減や取引停止などを検討する可能性もあります。

そのため、ABLを利用する場合は、取引先との信頼関係に影響を及ぼすリスクがあることを覚えておきましょう。

売掛先の信用力によって融資額が異なる

ABLの融資額は、売掛先の信用力によって異なります。例えば、大企業は売掛金の90%程度、中堅企業は売掛金の80%程度、中小企業・零細企業は売掛金の70%程度、といった具合です。

いわゆるスタートアップ企業などの売掛債権を担保に融資を申し込んでも、評価が低く必要な金額を調達できない可能性もあります。一方、大企業の場合は評価が高いため、十分な資金調達が可能です。

ただし、通知や承諾によって信頼関係に傷が付く恐れもあるため、担保設定する売掛債権は慎重に選択しましょう。

不良債権化しても返済しなければならない

ABLは金銭消費貸借契約に基づくいわゆる借金に該当するため、たとえ担保設定した売掛金が入金されなかったとしても返済しなければなりません。これは、売掛債権の売買契約であるファクタリングと最も異なる点です。

売掛金の支払い遅延や不良債権化で回収が滞ると返済が難しくなる可能性もあるため、ABLを利用する場合は未回収リスクの低い売掛債権を担保に設定しましょう。

簡単に資金調達するには「支払い.com」がおすすめ

より簡単に資金調達するには、「支払い.com」の利用がおすすめです。支払い.comは、株式会社UPSIDERと株式会社クレディセゾンが共同で運営する新たな金融サービスで、請求書の支払いをカード決済することで簡単に先延ばしにできます。

クレジットカードさえあれば利用が可能で、事前の申込みや面倒な審査、担保や保証人は一切不要です。最短60秒で支払いを先延ばしにできるため、資金繰りの改善に大いに役立ちます。業界最低水準の低廉な手数料で利用できるため、急な資金調達には支払い.comがおすすめです。

まとめ

今回は売掛金による資金調達について解説しました。従来、売掛金を支払期日前に現金化することはできませんでしたが、ファクタリングや売掛債権担保融資(ABL)などを利用することで流動化が可能です。

しかし、ファクタリング・ABLはメリット・デメリットのある流動化手法であるため、慎重に利用する必要があります。より簡単に資金調達するには、「支払い.com」の利用もおすすめです。当記事を参考に、売掛金による資金調達を検討してみましょう。

支払い.com by クレディセゾン×UPSIDER は、クレジットカードで資金繰りを改善できる「請求書カード払い」サービス。

請求書の支払いをクレジットカードで決済することにより、支払いを最長60日先延ばしすることができます。

例:期限が12月31日の支払いが200万円あるが、手元の現金では支払えそうにない…

  • 12月29日までに支払い.comで振込情報を登録。12月31日までに取引先へ振込が行われます。
  • この時点で200万円+手数料4%のカード決済が発生しますが、
  • ご利用のカードが毎月15日締め、翌月末日払いだとすると、カード利用金額が引き落とされるのは2月28日になります。
  • つまり、銀行振込の場合に比べ、口座から現金が減るのを約2ヶ月間先延ばしできたことになります。(12月31日→2月28日)

※ここでは休日・祝日は考えないものとします。

支払い.comを使うメリット

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資金繰り改善としてファクタリングがありますが、支払い.comとファクタリングは全く異なる仕組みのサービスです。

  • 支払い.com:支払いを遅らせる
  • ファクタリング:入金を早める

支払い.comとファクタリングの違いをまとめると、以下の通りです。

支払い.comファクタリング(例)
資金繰り改善の仕組み支払いを遅らせる入金を早める
手数料4%15%
利用可能額1万円〜上限なし50万円まで
審査審査なし審査あり
必要書類書類提出なし決算書など
カード利用可能不可能
取引先への通知なしあり(三者間の場合)
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